海の概況


1月の雨季のど真ん中に行った。
タヒチとしてはいいシーズンではないそうだがランギロアは
高い山が無いので雨はスコールだけで晴れるという話を信じて・・・。

まあ何度もスコールは降ったし入道雲が黙々かっこよく流れていったが
まあ晴れが多く何の問題もなし。
この時期だけマダラトビエイが群れるそうなので
それを考えると雨季の方がダイビングにはいいかもなぁ〜。

環礁の外は波が高かったこれは雨季のせいなのか単に風が強かったのかは不明。
いずれにせよダイビングスタイル的には小物全くなしの中層メインなのでうねりは無関係。
ポイントまで近いしゾディアックだと酔う余裕もなさそう、多少の荒れは特に問題はなさそう。

とにかく変な海だった。

一言で言えば
『貧しさにあえぐ華々しい海』

ヒメフエダイやシマハギが異常なほど多量に群れ
大物が飛び交いイルカが泳ぎサメが群れる。豊かに見える。
「すごい魚の群れですね〜〜」皆そう言って帰るのだろう。

しかしよく見ると生物の総量は決して多くない。
また種類も非常に少なく限られた種類だけが個体数多く住んでいる。
特にプランクトンフィーダーは魚に限らず甲殻類も腔腸動物も異常に少ない。
そう単に少ないのではなく見たこともないくらい異常に少ない。

浮遊物を食べるスズメダイは少なくハナダイなど皆無に近い。
グルクンの仲間も海のイメージから考えると極小数だ。
浮遊物を食べるカニダマシの仲間が1匹も居ない。滞在中カンザシヤドカリを見なかった。
そもそもカンザシゴカイ自体もほとんど居ないのだが。
流れる場所にもイソバナ・ウミウチワ・トサカ・ソフトコーラルなどが全くついていない。
サンゴも夜、捕食能力の高い限られた種類しか生えれない。
どこもかしこもヘラジカハナヤサイサンゴしか無いのだ。
ミドリイシの仲間など矮小化したのをいくつか見ただけだ。
被覆型のサンゴは少量見られた。
光合成の元になる栄養分を取り入れられないのだろう。
異様な圧倒される風景だ。
特にヘラジカハナヤサイのみのさんご礁はすごい風景だ。
白化前もこんなサンゴの分布だったのだろうか?
非常に興味深い。


この貧しさ原因は
透明度の良さと陸のなさにあるのだろう。


透明度は非常に良い。
50〜60m当たり前、どこまでも見えるし海の色が沖縄あたりとは根本的に違う。
少しカルチャーショックを受けるほど透明度は良い。
しかしこれは水中の栄養分の貧しさを物語る。

環礁の中も
貧しい水に栄養分を補給できるほどの陸地がない。
陸地面積が非常に小さいしかし規模は世界最大の環礁が
透明度の非常に高い大海原にぽつんとあるのだ。
どこからも栄養補給を受けられず環礁の中でさえ底生ハゼなどほとんど居ない。
スノーケルでビーチ前の砂地を探したが
シノビハゼの仲間数匹・イトマンクロユリが少しだけしか探せない。
そもそもナマコを全く見なかったな1匹も見なかった。
これは砂中の栄養分の無さを示す。
そこで試しにビーチ前の水中を何ヶ所か掘ってみた。
ただ白い砂しか出てこない。
通常、栄養分を含んだ砂は黒ずむ。
普通の南国はナマコや微生物のおかげで表面は白いが
少し掘るとすぐグレーがかった栄養分を含んだ砂が出てくる。
ランギロアの砂はどこまで掘っても白い。
こりゃナマコもハゼも住めたもんじゃないわな。

貧しい水中環境の中で効率よく栄養分を取り入れられる場所は流れのある所
絶対量が少ないなら流量を増やせば目の前を通る栄養分の量は増える。

だからこの流れるパス(環礁の切れ目)にだけ魚が集まるのだろう。
貧しい環境に耐えられる限られた少ない種類の魚のみが
数多く群れるという妙な環境を作り出しているのではないだろうか?
潜っていないからわからないがきっとパス以外の場所の生物量は
かなり少ないのではないだろうか?
このパスだけが貧しい砂漠の唯一のオアシスになっているのではないだろうか?


今回、環礁内でタンクを背負う機会がなかった。
南太平洋の固有種のマクロ物を探せなかったのも心残りだが
パス以外の水中環境を見る機会がシュノーケルしかなかったのは、非常に心残りだ。

変な環境だけにいろいろな場所を見てみたかったもんだ。



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